松本清張・サスペンス:1

十万分の一の偶然

モンゴルで取材中のフリールポライター・山内正平(田村正和)へ、娘・明子(中谷美紀)の婚約者・塚本暁(小泉孝太郎)から妻の死後育ててきた明子が叔母・恵子(岸本加世子)の入院先の沼津への途中東名高速道路で事故で死亡したと連絡があった。
取材で遠出の正平が知らせを受けたのは、事故から1カ月後だった。
正平は帰国の機内で、一枚の写真・娘の事故の瞬間を偶然捉えたという写真に娘の最期の姿が写り、娘の死の謎以外考えれなかった。
「激突」という写真は山鹿恭一(高嶋政伸)というアマチュア・カメラマンが夜景撮影中偶然に事故を目撃し撮り、写真評論家・古家庫之助(伊東四朗)が「十万分の一の偶然」と絶賛し山鹿が「ニュース写真年間最優秀賞」を受賞した。
授賞式で山内に、週刊誌編集者・小泉恵美子(松下由樹)が山鹿した質問「事故でたった一人の生存者・米津康吉が、直前に「赤い火の玉を見た」と言っている」に山鹿が反応した事が正平に引っかかり事故に関係していないか疑問になった。
小泉は山内に山鹿はストロボは使用していないと言ったが、何故わざわざ言ったか疑問で、米津康吉が沼津の病院にいてそこは恵子と同じで訪問すると看護師・布川麻奈美(内山理名)が康吉は危篤で会えないがその妻は「しっぽが」と譫言で言うとし、叔母・恵子は肝臓移植のドナー待ちだった。
沼津南署刑事・岩瀬(内藤剛志)は疑問が残るようだが警察全体の見解は事故で、小泉と現場に行った山内は火の玉も夜景も見なかった。
明子の親友のカメラマン・腰坂奈月(若村麻由美)と相談してトラックを影響させる強力なストロボを知り、山内は山鹿所属の写真クラブで夜景は普段取らず最近女性が変わったと聞き、山鹿の写真展に偽名で行き写真と仕事の話をした。
山内が山鹿を東京に呼び出した日に、沼津の病院から塚本が米津康吉が持ち直したと電話があったが、次に岩瀬から米津急死の電話が入り、次に山鹿がかなり遅れて来て、病院の防犯カメラから塚本が米津殺害容疑で逮捕された。
山内は偽名で山鹿宅に行き父の趣味のラジコンや本人の趣味の写真機器を見て、山鹿から事故の他の多くの写真を見て古家の「チャンスは作る」を信じていると知るが、腰坂からストロボは風の影響で無理と聞き、沼津ローカル新聞で同日のUFO騒ぎを知った。
新聞記者から場所と写真を見せて貰うと看護師・布川が写り、山内は岩瀬刑事に山鹿との関係捜査を依頼し米津殺害の可能性も指摘した。
<以下、隠し字>
山内は山鹿に、火の玉・UFOの正体とストロボの自動発光の仕組みを問うが山鹿は実証が無いと答えるが、その会話はビデオに撮られていた。
防犯カメラの後姿が山鹿との証言から事件は解決した。


監督:藤田智二
脚本:吉本昌弘
原作:松本清張
出演者:田村正和・中谷美紀・高嶋政伸・小泉孝太郎・岸本加世子・伊東四朗・松下由樹・内山理名・内藤剛志・若村麻由美
制作年:2012年


感想: 時代を現在に設定しているので、モチーフ以外はオリジナル脚本と言えるでしょう。
警察の組織としての無能さと、山内側の都合の良い情報が目立つ。
映像としては、判りやすいレベルで良いのだろう。

寒流

新都銀行池袋支店の新支店長・沖野一郎(椎名桔平)は学生時代の友人で頭取の娘婿の常務・桑山英己(石黒賢)が激励されるが、前支店長からは引き継ぎで常務には注意を言われた。
挨拶回りで料亭「みなみ」の女将・前川奈美(芦名星)と会い、立派な経営者で美女で未亡人で沖野は心を奪われた。
沖野は藤沢の父から妻・蓉子(有森也実)が40才で決断すべきだと言われた。
奈美の希望に対して沖野は料亭増築のための融資を進め、彼女に通い不倫関係が進展するが、妻・蓉子との関係は悪くなっていった。
蓉子の父親の子どもを作れの催促には思うにならず、蓉子も心身ともに疲れたが、沖野はさらに奈美に夢中になった。
桑山がやってきて日に、奈美が融資の相談に来て、沖野と桑山が会うが桑山が奈美に興味を示し、数日後再び沖野に桑山は奈美と3人で熱海へドライブに誘った。
熱海の高級旅館で桑山は沖野の目の前で奈美を口説き、その後は奈美は沖野と会わなくなった。
沖野に妻・蓉子が睡眠剤の過剰投与で救急車で運ばれ沖野の不倫に気づいたようで、その後会った奈美から沖野が惨めに見えると言われた。
沖野は群馬の支店へ異動になり、桑山による左遷と思い私立探偵・伊牟田博助(笹野高史)に桑山と奈美の素行調査を依頼した。
繰り返しの調査で桑山と奈美の関係が明らかになり群馬に来た伊牟田は、桑山は不倫以外にも税金操作の疑いが有ると言った。
沖野は総会屋・福光喜太郎(中尾彬)に入手情報を知らせ、福光は総会は荒れると言ったが、その後呼び出し情報は嘘だと言い事前に桑山に会って分かったと言い、群馬にヤクザが来て脅しをかけた。
伊牟田は探偵を止め中古車のセールスを行っていたが、沖野に手紙を寄越し会うと誤解があり素行調査は正確で、福光に騙されていると言った。
<以下、隠し字>
沖野は伊牟田に桑山の同一種の車を依頼し、入れ替え知らない内に窃盗させた。
桑山は公然とスキャンダルを否定し、沖野は北海道に左遷になり、奈美は政務官へ近づいて行った。


演出:生野慈朗
脚本:長坂秀佳
原作:松本清張「寒流」(新潮文庫「黒い画集」所収)
出演者:椎名桔平・芦名星・有森也実・石黒賢・笹野高史・中尾彬
制作年:2013年


感想: 出世コースを暖流と言い、それ以外を寒流という。
寒流の沖野と暖流の桑山を描くが、沖野自体が家庭を捨てて不倫に走り、はたして桑山・奈美に復讐だと言えるかどうかも疑問だ。
原作が短編で、サスペンス色は無くゆったり進む。

留守宅の事件

元町工場の親父(なだぎ武)が保証人から借金を作り犯罪を犯して槙原秀則(柄本佑)らが逮捕するが槙原は過剰に痛めつけ、警視庁捜査一課刑事・石子隆明(寺尾聰)は悪意が犯罪に形を変えたと言った。
栗山敏夫(野村宏伸)・恭子(伊藤裕子)夫妻と高瀬登(長谷川朝晴)・恭子の妹の昌子(戸田菜穂)夫妻と、栗山の親友の萩野光治(堀部圭亮)・あさみ(濱田万葉)夫婦が恭子の誕生日を祝い写真を撮った。
2ヶ月後に恭子の捜索願いが夫から出され、5日間の東北出張から帰宅してが姿が無く、妹・高瀬昌子が物置で死体を発見し、石子・槙原・田中徳則(高橋和也)・藤本健(高杉瑞穂)らが調べ始めた。
石子は自宅で娘・田辺奈々(黒川芽以)から妻・静江(高橋惠子)は書道教室で忙しいと聞くがしばらくもっと忙しいと答えた。
第3者が恭子殺害目的で侵入の可能性として家族以外の指紋が検出されるが石子は違和感を持ち、捜査会議で栗山に犯行可能性を検証し不審者の近隣住民・小川(大島蓉子)の目撃情報もあり、石子・槙原が郡山に出張し1月29日からの出張で部下・松下(水澤紳吾)と一緒だが31日の午後は栗山だけ郡山の親友・萩野光治の家に泊まり萩野あさみの証言でアリバイがあった。
萩野夫妻・高瀬夫妻と栗山夫妻の写真を小川に見せ目撃が萩野と判明し捕らえたが、住居侵入は求めるが殺人は否定した。
石子は昌子から恭子は自由を欲しがったと聞き、栗山が不倫を知らなかったか疑問で、ドレスが無くなっておりそれを殺害当日着ていたと判った。
<以下、隠し字>
石子は恭子の殺害場所が東京以外のと知り、犯人は密告手紙で殺人計画を作ったと言った。
石子は昌子に密告写真の影響を考えなかったのかと聞いた。


監督:本木克英
脚本:坂上かつえ
原作:松本清張
出演者:寺尾聰・柄本佑・野村宏伸・戸田菜穂・高橋惠子・堀部圭亮・宇崎竜童・伊藤裕子・濱田万葉・黒川芽以・水澤紳吾・大島蓉子・高橋和也・高杉瑞穂・長谷川朝晴・なだぎ武
制作年:2013年


感想: サスペンスとしては軽く、主に夫婦や姉妹の関係が焦点になる。
それと、殺意が何故起きるかを考えるままに定年になった刑事と若い刑事の考えの食い違いが近づく所もテーマだろう。

小暮涼子(松雪泰子)は舞台女優だが映画「春雪」で大女優・五十嵐晶子(稲森いずみ)との共演で端役で顔が大きく映るのは一瞬だが、注目されて監督から新堂哲彦(武田真治)との主演映画の話が出て全国に顔が知れると言われた。
上京して9年、夢の大女優への道が開けるがチャンスを前に1つの不安が涼子に有った。
昭和22年、九州で小暮涼子は米国兵相手に大衆酒場で働くが同僚から疎まれいやがらせを受けたが上京し大女優になる夢があり、飯村恭三(坂口憲二)と出会った。
買い出しで列車に乗り遅れた涼子は飯村と会い、女優の夢を話した。
瀬川真奈美(田中麗奈)は多くの弟たちを養うために伯母の家に世話になり、大衆酒場で働き稼いでいた。
涼子と飯村は男女の関係になり飯村は友達の知り合いの石井監督に紹介すると言ったが、飯村は真奈美と会い真奈美はうどん屋の手伝いをしていると言ったが女給をしていた。
飯村は研修生になるには費用が必要で諦めろと言ったが、涼子は働いて貯めたお金があると言い母の形見も売って、金を飯村に渡すが、飯村は大衆酒場で真奈美に会い騙されたと怒り金を渡すが自分を買えと言われ一緒に過ごし、帰った真奈美は伯母に縁談を受けると言った。
涼子は他の女給が飯村に金を騙しとられたと聞き、会うと追加の費用を要求され嘘と言われ犯され、涼子は飯村を温泉へ誘い出し、島根の浜田に嫁にゆく瀬川真奈美と列車で出会い、目的地に着くと涼子は飯村を刺殺し証拠を処分して上京したが、飯村事件は犯人が見つかっていなく、涼子は瀬川真奈美の調査を依頼し、百姓で暮らしていると知った。
涼子は新堂の横槍で主演が五十嵐になり涼子は脇役で、五十嵐から女優に向かないと言われ、涼子は招待なしに新堂の誕生パーティに押しかけ言い寄り寝て主役を得た。
<以下、隠し字>
涼子は不安を抱え真奈美を消す計画を練り、梅谷育子の名前で現在の豊田真奈美に書留を送り場所と日時指定で呼び出し、殺害計画を練った。
真奈美の夫が書留をみて真奈美と相談し警察に連絡し、刑事(中原丈雄)らが来て知らない事を知っていると言うが、真奈美は昔の仕事を夫に知られたくないと言うと夫は既に知っていて結婚したと聞かされ、犯人を捕らえて夫を安心させようと言われた。
真奈美と刑事らが待合場所に早く着き、涼子は真奈美と刑事を見かけ同じ店に食事で隣りに座ったが、真奈美は涼子に気づかなく涼子は去った。
真奈美らは待ち合わせに相手が来ず、撮影に戻った涼子はシーンを煙草を吸う場面に変更にした。
真奈美は夫に誘われ涼子の最新映画を見て、煙草を吸う場面で昔の涼子を想い出し・・・・・・・。


演出:澤田鎌作
脚本:根津理香
原作:松本清張「顔」
出演者:松雪泰子・田中麗奈・坂口憲二・武田真治・稲森いずみ・中原丈雄
製作年:2013年


感想: 短編の長編映像化だからメインアイデア以外はオリジナルだ。
犯罪計画を想像する場面は如何にも不自然な妄想だ。
長編で物証なしで途中で終わらすのは流行か?。

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